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2007年3月25日 - 2007年3月31日に作成された記事

2007年3月30日 (金)

宮崎駿とジョン・ラセター  友情と創造

27日(火)にNHKのプロフェッショナルでやった宮崎駿監督のスペシャル番組を見ました。
その昔(最近は昔話ばかりだぞ‥‥まずいなぁ)、NHKで初めて毎週連続のアニメーションをやるというのでちょっと話題になった番組がありました。ぼくは第二話から見たのですが、うん? と思い、第三話のジムシーとコナンの出逢いのエピソードで完全にイカレてしまい、後は夢中で最終話まで見つづけ、テレビアニメーション史上(いや、すべてのアニメーション史上と言ったって構わない!)最高の作品だ! と大絶賛して当時のSF研の仲間達に大いに奨めた記憶があります。そう、『未来少年コナン』のことです。宮崎駿の初演出作品でもありました。
その宮崎監督も既に60歳を大きく越え、数々の名作を発表して今や名実共に日本の映画監督を代表する方になりました。
そして現在、もしかすると、最後になる可能性もある長編アニメーション『崖の上のポニョ』を制作中であることは多くの方がご存じでしょう。
          ☆
ところで、たまたまその前日、ぼくはDVDでレンタルした『ラセターさん、ありがとう』というビデオ作品を観たばかりでした。これは、2002年に『千と千尋の神隠し』が北アメリカの映画祭に出品され、また一般公開されたときに、その英語版の監修を務め、また様々な面でのサポートを惜しまなかったピクサー・アニメーション・スタジオのジョン・ラセターさんへの深い感謝の念を示すために個人宛ビデオレターとして制作された当時の記録ビデオです。この時のプロモーションの成功がやがて『千と千尋』にアカデミー賞をもたらした、といっても過言ではないと思われます。
宮崎監督と鈴木プロデューサーを始めとする日本スタッフがカナダやアメリカでラセターさんのサポートを得て映画祭や映画のプロモーション活動をする様や、ラセターさんが『トイ・ストーリー』他で大成功を収めて建設したピクサーのスタジオを訪問する様子、さらにラセター家に招かれて歓待される様子等が記録されています。
その何れの場面でも印象的なのは、今やアメリカのアニメーションの世界を代表する人物となったラセター氏が、いかに宮崎監督を敬愛しているか、ということです。ラセターさんと宮崎さんは、残念ながら失敗に終わった(と言い切りたくはありませんが)プロジェクトである映画版『夢の国のリトル・ニモ』の製作時に宮崎さんが渡米したとき出会ったといい、既に交流は20年間に及ぶそうです。その時の出逢いは、親子ほど年が離れているにもかかわらず、双方にとって印象的であったようです。ラセターさんはまだコンピュータ・アニメーションの可能性を夢見ているディズニーの若い無名のアニメーターでしたし、宮崎さんも一般的な知名度はほとんどありませんでした。しかし、その後宮崎さんは『ルパン三世/カリオストロの城』『風の谷のナウシカ』‥‥とアニメーション史上に残る作品を連発し始め、ディズニーの保守的なアニメーションに閉塞感を感じていたラセターさんに衝撃を与えます。アニメーションは子ども(だけ)向けのものではない。何でも描けるのだ。だって、ほら、ここに本当にそうしている人がいるじゃないか!
そして、その後の作品を通してラセターさんの宮崎さんへの尊崇の念は深まりこそすれ減ずることはなかったのでしょう。ラセターさんは繰り返し、宮崎アニメの素晴らしさと、自分が如何に影響を受けたかを語っています。2002年のラセターさんの歓待は本当に心からのものであり、ほとんど宮崎さんを父のようにしたっている、と言うにふさわしいほどのものであることが画面から伝わってくるのです。
          ☆
ところが、一方でアニメーションの作り方は、様々な面に違いも見られます。確かにアニメーターとしてのどこか核心で相互に深い共感を持ち、影響関係があったことを疑いませんが、にもかかわらずどこか根本的な違いもあるのは間違いないことです。その点について、二人は互いの方法を紹介し合い、大きな違いを確認しあってもいます。
大きく言って、宮崎さんは昔から現在に至るまで、宮崎駿個人のクリエイティビティを基本に、それを他のアニメーターに敷衍していくことで作品を作っていくのですが、ラセターさんは個人の発想から始まるにしても、各段階で常に信頼できる小さなグループの中でのディスカッションにより相対化し、また練り上げていくプロセスで作品を作っていくのです。
よく言われる言い方では、日本人は和を重んじ、欧米人は個人主義的である、と言うのですが、この場合はどうでしょう? むしろ、宮崎さんは「私」の発想にこだわり、作家性がますます全面に出てくるようになっています。アニメーションは個人では完結しないジャンルですが、その中で最大限自己の(商業)芸術を追究しているとも感じられます。対して、ラセターさんの場合が個人主義的でない、という風に捉えるのは短絡的でしょう。彼らのやり方が個人主義を土台にしていることはおそらく間違いありません。むしろ、その個人主義の良き伝統の上に、分業化と、対等なディスカッションのプロセスがアニメーションを最大限商業的にも成功する良い作品に導くという確信が見て取れるのです。
宮崎さんのアニメーションは、おそらく、ラセターさんとピクサーが百年かかっても達成できないような輝くような独創性を持ったアニメーションを生み出すかもしれませんが、百年後にはもちろん宮崎さんは現存ではなく、ジブリが優れた作品を生み出し続けている可能性は、ピクサーに較べて低いのではないか、というのが個人的な感想です。
           ☆
NHKの番組では、「ポニョ」の制作の初期段階ではできるだけ親切に番組のディレクターに対応していた宮崎さんが、制作が進行するにつれて、少しずつ気むずかしく、孤独になり、番組に協力する余裕がなくなっていく、というより自ら自分を追い込み、番組への協力を切り捨てていく様子が正直に描かれていました。
それがしかし、宮崎駿があの数々の名作を生み出すということなのです。

ここでどちらが良いとか言いたいわけではありません。様々なことを考えさせられた二本の作品でした。

2007年3月29日 (木)

「転校生」ふたたび

またまた、映画の話題。大林宣彦監督の名作『転校生』が四半世紀ぶりに監督自身の手でリメイクされる—という情報は確か既にお知らせしました。
その公開が6月下旬、東京では新宿ガーデンシネマで、に決まったとのことです。
まだ中身はありませんが、オフィシャルサイトも出来ています。
尾道ではなく、長野で撮影された今回の転校生。期待していいのでしょうか? いや、期待しないわけにはいきません。自作のリメイク、という冒険にまたもやチャレンジされた監督に拍手!

深夜だってかまうものか—お薦め映画だよ。

ぼくは、アンソニー・パーキンスという俳優(既に亡くなっています)のファンなのですが、彼の映画が久しぶりに二本も放映されますので、ご存じない方(あるいは、ヒッチコックの「サイコ」の不気味な役しか知らない方)に、是非この機会にご覧になることを奨めるために放映予定日を記しておきたいと思います。
何れもNHK BS2で、
「さよならをもう一度」
4月5日(木)AM0:40〜AM2:41 (実際には4日の深夜と言うべきか、5日の早朝というべきか)
共演はイングリッド・バーグマン、イヴ・モンタンで、原作はフランソワーズ・サガンの「ブラームスはお好き」です。パーキンスはこの演技でカンヌ映画祭主演男優賞を受賞しています。パーキンスの代表作といってもいいでしょう。
「緑の館」
4月10日(火)AM1:00〜AM2:46(これも、9日の夜中、と思った方が見逃しにくいと思います)
共演は、オードリー・ヘプバーンですよ! あなた。
原作はハドソンの同名小説で岩波文庫に入っているロマンティックな傑作。映画の監督は当時オードリーの夫だったメル・ファラーで初監督。実はあまり評判がよくありません。ラストの改変を始め、演出に甘さがあるからでしょう。しかし、パーキンスもオードリーもロマンチック・ロールの王道でした。

未見の方、久しぶりという方、是非お薦めします。何分二本とも人の寝静まる深夜放映ですが、本当に珍しい機会なので、お薦めします! ぼくも見ようっと。

写真は、オードリー、バーグマンと。共演者を見ても、如何にトニーが人気俳優だったかわかりますね。
Tonya

Goodbyagain

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