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2009年12月27日 (日)

小田和正とクリスマスの約束2009 —あの感動はどこから来たのか—  

 「クリスマスの約束」という番組がある。2001年から毎年12月25日(多少のずれは年によりある)の深夜にTBSで放映されている小田和正をホストとした番組である。
 僕は「さよなら」でオフコースがブレイクする少し前からの小田ファンだけれど、うかつなことにこの番組のことに気がついたのはほんの二三年ほど前からに過ぎない。ここ二三回(二三年)この番組を見て、小田さんの「思い」が色濃く投影された番組作りを、大変興味深く思っていた。
 この番組のスタートは、必ずしも順調ではなかったようだ。(概要はこちらを参照のこと。http://ja.wikipedia.org/wiki/クリスマスの約束
 しかし、2009年の今年は、小田和正が「前からずっとやってみたかった企画」として、思い切った企画が実現した。小田さんを始め、今年のゲスト(AI、Aqua Timez、いきものがかり、キマグレン、Crystal Kay、財津和夫、佐藤竹善、清水翔太、JUJU、スキマスイッチ、鈴木雅之、STARDUST REVUE、中村 中、夏川りみ、一青 窈、平原綾香、広瀬香美、藤井フミヤ、松たか子、山本潤子、以上50音順)が全員で、それぞれの代表的なオリジナル曲をワンコーラスずつメドレー形式で歌い継ぐのだという。タイトルはそのままズバリ、《22分50秒》。メドレーの曲の長さがそのままタイトルになっている。全体のアレンジは小田が行っている。
 番組は、その小田の企画の立ち上げから、参加ゲストたちとの話し合い、テレビ局スタッフとの話しあい、リハーサルの模様等をドキュメントで追っていく。そして、本番を迎える。

 誰もが、始めは懐疑的だった。まず番組スタッフが、不安をあらわにしていた。
 様々な個性を持つアーティストたち。小田は彼らに手紙を書いて、オファーしたと言う(註1)。
 しかし、彼らは歌い方が違い、フィーリングが違う。年齢も違い、音楽への取り組み方も違うだろう。同じく舞台に立つとは言え、監督がいて、脚本があり、共演者とのアンサンブルでドラマという芸術形態を作り上げていく役者とは違い、自分たちの言葉・音楽とパフォーマンスで、自ら独自の世界をステージ上で築くことに命をかけるシンガーたちは、基本的に常に自分が主役だ。これだけたくさんの同業者たちと「共演」する、自分が脇役になる、というような体験に慣れているわけではない。

 

 だが、必ずしも先行例がないわけではない。すぐに思い出すのは、USA for Africa - We Are The World.  だろうか。(詳しくは、http://ja.wikipedia.org/wiki/ウィ・アー・ザ・ワールド
 こちらも、40人以上にも及ぶシンガーたちが一同に会してひとつの曲を歌った。《22分50秒》との違いは、We Are The World. の場合は、チャリティーのための新曲であるオリジナル曲を基本はユニゾンで、せいぜいワンフレーズずつ歌い継いだ形式であったのに比べて、こちらは、各シンガーの既成のオリジナル曲のメドレーであることである。(そもそも、「クリスマスの約束」のテーマ曲として、「この日のこと」という小田自身による同じような試みが先行してあったようだが、僕は詳しくはしらない。http://ja.wikipedia.org/wiki/この日のこと

 We Are The World. の場合は、作曲したライオネル・リッチーとマイケル・ジャクソン以外にとっては自分のオリジナル曲ではないわけで、ある意味で対等の立場で参加している。しかし、《22分50秒》の場合は、全体としては、各自のオリジナル曲のメドレーであり、かつ、曲と曲とのつなぎだけでなく、全体を小田がアレンジして、コーラスやハーモニーが付けられている。つまり、一人当たり平均して一分程度、自らのオリジナル曲を歌い継ぐが、そのオリジナル部分にも小田のアレンジが施され、コーラスや、ユニゾンが付加される場面が多く、それ以外のパートでは、ほかのシンガーたちのバックコーラスに回るのである。結局、《22分50秒》の大半を、他人の曲のバックに回ることになる。しかも小田は、他人の曲の間、為す術もなく立ちん坊になるのではなく、各シンガーがきちんとコーラスに参加することを望んでいた。つまり、全体のほとんどをきちんとお互いの脇役としての役割を果たすように求めたのだ。

 おそらくは、自らの楽曲についてそれぞれ一国一城の主である各シンガーにとって、そんな試みが成功する、というイメージが成り立ちにくかったとして、不思議はない。おそらくは、We Are The World. より、そのアーティスト魂に抵触する部分(?)は多くあったはずだ。

 TBSの番組スタッフもまた、各アーティストのメドレーをやろう、という小田のアイディアに、それで何になるのだ? という疑問があったようだ。例えば、アフリカを助けるチャリティー、等の名目もない。ただ、小田が声をかけたいアーティストに声をかけ、それぞれの代表曲の一部をメドレーにする、そんな試みにどんな意味があるのか。きっと、わからなかったに違いない。

 実は、小田自身、確信はなかったようだ。ただ、彼はやってみたかった。はっきりとしない、小田の情熱のようなものだけが、このプロジェクトをひっぱっていた。プロジェクトの実行委員会のような会議の中で、小田の構想についての率直な疑問が、参加する年下のアーティストたちからぶつけられたという。
 「やっぱり、そんなに簡単なことじゃなかったんだな……」
 会議の後で、思わずそうつぶやく小田の姿をカメラはとらえていた。

 しかし、リハーサルは始まっていた。小田と参加アーティストたちは、走りながら、形をつくりながら、そのプロジェクトの可能性を確かめていこうとしていた。

 ドキュメントは、そこで終わり、当日を迎える。

 そして始まった、《22分50秒》。(註2)
 藤井フミヤから始まり、歌い継がれる各シンガーの曲。交代するときにはハイタッチ。誰の顔にも笑みが浮かび、その顔が輝き始める。順に自分の歌を歌い、ハイタッチして、サポートにまわる。その繰り返しが、徐々に不思議なバイブレーションを生んで、各アーティストを、観客を巻き込んでいく。
 ああ、そうか、まるで駅伝のようなのだ。タスキの代わりに自らの歌を手渡して、走り継いでいる。マラソンを、駅伝にしてしまった、日本人によるイベントでもあったのだ。観客がみんな、沿道で懸命に旗を振る人々に重なる。歌いながら、同じ場所と時間を共有しながら、誰もが感動しているように見えた。
 その、魔法のような《22分50秒》が終わったとき、拍手が鳴り止まなかった。
 小田和正は言葉を失った。
 きっと、彼の思惑を超えて、感動が彼を圧倒していた。

 何故、このようなことが起きたのだろう。
 きっと、それは小田の世代の古い夢、につながっている。
 (いや、もっと単純に、野球少年の夢、という方が当たっているかもしれないが)
 それが、僕の直感だ。

付記)いろいろと権利関係が難しいに違いないが、この番組、DVD化してほしい。みなさん、是非実現するように、声を合わせましょう。

(註1)小田和正の手紙

アーティスト諸君へ

前略、突然のことで、お許しください、お願いの手紙です。

ずっと考えていました。
たくさんのアーティストが一堂に会して、
一気に「歌いたいうた」を全員で歌ったらどうなんだろう。
たくさんというのは具体的にいえば30人(組)を超えるくらい。
そのアーティストたちが、できるだけみんなで選んだ30曲ほどを
1コーラスづつ、休まず、通して歌い倒す。
イベントのフィナーレのように
歌わないけどそこに立っている人もいる、ではなくみんなが精いっぱい歌っている。
そしてその歌のすべてが、誰もが知っている「あの曲」である必要はない。
それをTBSの「クリスマスの約束」という番組でやってみたいのです。
それがどうしたんだといわれても、甚だ無責任ですが、
返せるような確かな答えはありません。
何かが伝わるかもなどとも言いません。
でももし「それ、面白そうじゃん。付き合ってもいいよ」と
膝を軽くポンと叩いて同意してくれるようなら
「どんなヤツが来るの?アイツがいるならイヤだ」と言う、
まるでちょっと前のボクのような了見の狭い気持ちはこの際、
思い切り捨てていただいてぜひ参加してください。
運動会の参加費くらいのものと、たいへんだったなぁという思い出しか用意できないと思いますが、
基本的にすべての曲は、全員でユニゾン、つまり斉唱でと考えています。
そしていちばん肝心なこと、収録日は11月30日を予定しつつ、
ご返事、さらに忌憚のないご意見をお待ちしています。

2009年8月 小田和正
 

(註2)曲順(「この日のこと」は小田作の「クリスマスの約束」のテーマ曲)

22’50”

この日のこと
トゥルーラブ 藤井フミヤ
今夜だけきっと スターダストレビュー
ロマンスの神様 広瀬香美
明日がくるなら JUJU
明日、春が来たら 松たか子
友達の詩 中村中
LaLaLa 佐藤竹善
恋におちたら Crystal Kay
Story AI
夢で逢えたら 鈴木雅之
ハナミズキ 一青窈
翼をください 山本潤子
HOME 清水翔太
YES-YES-YES 小田和正
LIFE キマグレン
虹 Aqua Timez
全力少年 スキマスイッチ
Jupeter 平原綾香
涙そうそう 夏川りみ
青春の影 財津和夫
帰りたくなったよ いきものがかり

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コメント

2011年のクリスマスの約束は、多くの仲間とのメドレーを歌うという意味で、2009年の再現のような趣がありましたね。
もちろん、初めてのチャレンジとしての2009は、やはり本当の一回きりのマジックのような、小田さん自身も言っていたように奇跡のような出来事で、その意味では今回はまた違った意味合いのクリスマスの約束ではあったと思いますが、それはそれとして素晴らしかったです。

DVD化については、むしろ中国で違法コピー(ですよね、もちろん)のDVDが売られていたりして、おかしな状況にもなっています。なんとか正規のDVDの形で、売り出されてほしい。日本の音楽シーンが積み重ねてきたものが、やはり単なるブームなんかじゃない、ある種の重みをもったもの、それなりのクォリティを持ったもの、時間を超えて我々を動かすもの、であることを確かめさせてくれた番組でもありますよね。今回、その力の一部を震災支援として還元する、ということもあっていいし、それは小田さんや一緒に歌ったアーティストの考えとも矛盾しないように思います。

とてもとても感動しました。
最近は、k-popを好んで聞いていましたが、
日本、負けてないぞと嬉しくなりました。
たまたま録画していましたので、何度も何度も見ています。以前の分も、ぜひ見てたいです。

皆さんも望んでいる、『クリスマスの約束』のDVD化。
この際、売り上げの全てを東北沖大震災の被災者に寄付するという形でなんとかならないのかな~。

keikoさん(のお母さん?)

コメントありがとうございます。
小田さんよりもさらに一回り上の世代の方なんですね。ぼくは小田さんより一回り下の世代になります。
勇気を出してコメントして頂けて有り難いです。
小田さんの勇気が、あの番組を通じて、多くの人を感動させ、また勇気を奮い起こさせる力を持ったに違いないですね。
ぼくも、少しでも勇気を持ってことを成せるようになりたいです。

感動しました。
ビデオにとり、何度も何度も聞きました。
テープが擦り切れたのかもう見れませんが、音は聞けますので、仕舞い込みました。
75歳、お終いの時は出してきて聞きながら逝きたいと思ってます。
DVD化して欲しい。
勇気を出して娘のアドレスからアクセスしています。


てんてん さん

素晴らしい情報を頂きありがとうございます。
再放送をするんですね。
きっと、たくさんの再放送のリクエストがあったのでしょう。
確かに、DVD化は難しいでしょう。それでも、可能性がないわけではない、と期待は持ちたいですね。
実は、液晶テレビとブルーレイレコーダーを先日購入したのですが、届くのは4月4日なんです。
惜しい! 間に合いません。再放送に。
やれやれ、ついていないな。

DVD化の件は権利関係で、難しいでしょう。
小田さんが会合紙の人の為に毎年出している「Life Size****」という活動DVDがあるのですが、22’50”の部分は都合により載せられませんとありましたから...。
その罪滅ぼしではないですが、4/1(木)23:59に1時間半の少し短いVerですが、「クリスマスの約束2009特別編」として再放送されるそうです。TBS・HBC (北海道放送)・TUY (テレビユー山形)・SBC( 信越放送)・SBS (静岡放送)・CBC (中部日本放送)
※3/19時点
見る事の出来る方は永久保存盤として、録画しながらぜひ生で見ましょう。

アーティストの権利関係が複雑、というのなら、We Are The World.も同様ですよね。
とすれば、やはり「もう一度観たい!」という視聴者の声こそが、一番の力。そこに関係者の方々の努力がプラスされれば、何らかの形になるのではないでしょうか。

何度見て、何度泣いたかわかりません。
DVDほしいですね。(*^_^*)

賛成です。
DVD、Blu-rayで出してほしいです。
ちなみに「TBSのご意見・ご感想をメッセージフォームで送る」からお願いしてみました。
届きますように。

DVD化、もし可能だとしたら、どうすれば可能になるのでしょうね?

まず、DVD化を望んでいる人たちがたくさんいること。次に、その人たちの声をしかるべき人たちに届けること。

誰が、その「しかるべき人たち」なのでしょうか。よくわかりませんが、差し当たり、
http://www.tbs.co.jp/program/christmaslive_2009.html
に出ているスタッフの方々、とりわけプロデューサーの方々かもしれませんね?

参加アーティストの方々は多岐にわたりますから、その権利関係も複雑であり、多岐にわたるに違いありません。その複雑で手間ひまかかる(しかも、すべての権利関係がクリアにならないと最終的なゴーサインに至らないであろう)ことを考えると、これは簡単なことではないことは容易に想像できます。

それでも、やってみる価値はあると思います。きっと、まだ見ていない多くの潜在的に見てみたい人々がたくさんいるに違いないと思えますから。

ただ、それが単にお金もうけのためだけのプロジェクトになってしまったとしたら、ちょっとツマラナイ。ぼくはそんな気がします。小田さんがやってみたかったことの、その始めにあったはずの思いがなんであったのか、はっきりとわかるわけではありませんが、その思いとも、食い違うのではないでしょうか。
お金もうけのために、彼らは集まったわけではないでしょうから。

DVDも、一義的には見逃した人、何度でも見たい人、のために発売するとしても、そこに何か、もう少し冒険があってもいい。それがどんな冒険なのか。それはまだわからないけれど。

何かのチャリティーのようなことかもしれないし。何かの基金のようなことでもいいかもしれないし。売り上げで何かの二次創作のような試みがあってもいいのかもしれない。
いや、きっとこの歌に相応しい何かのカタチがあるような気がします。それが簡単に見つかるのかどうか、はなはだ危ういとは思いますが。

最も、そこまでぼくらが言うとしたら、踏み込み過ぎかもしれません。しかし、そこまで期待したくなる、してもいいようなプロジェクトなのじゃないでしょうか。

毎年、楽しみにしている番組です。今年は新聞の広告(?)のページに出演者全員が映っていたのでもうびっくりしました。
小田さん、すごいことやってくれるなー。ただただすごいの一言ですね。僕も何度観ても涙が出ます。ぜひともDVDにしていただきたいです。heart

はじめまして。

DVD化、私も大賛成です。
生で観たいと毎年応募していますが、今だ実現せず
悔しい思いで居ます。
何度観ても感動して涙が出てきますね。
多分、最後の出演者のコメントは全員が
しているはずで、
放送時間の都合でカットされたと思うのでそれも含めてDVD化して欲しいですね。
これは何処に要望すればいいんでしょうか。
やっぱりTBSテレビなんでしょうか。

感動しましたね。あわてて録画したので冒頭の4曲が間に合いませんでした。同じくDVD化してほしいのですが。

 我々がテレビで見ていても、これだけ励まされるのですから、当日参加した若いアーティストたちには、どんなに良い刺激だったことでしょうか。
 当日の感激は徐々に薄れていくに違いないでしょうが、いつの日か、壁にぶつかったとき、思うように音楽活動が続けられないとき、小田さんが一見不毛な試み、うまくいきそうにないこと、にチャレンジした勇気を思い出すことがきっとあるんじゃないか、そんな気がします。
 きっと小田さんは、そんな勇気のバトンを渡そうとしたんじゃないか、そんなことも思います。

全く同感です。
多くは語りません。
VTRを何回繰り返し見たことか・・・。
DVDの発売を望みます。

再放送の予定はないのでしょうかね。

感動でした!

もう何回見たことかっ^^

こういう素晴らしい番組が
深夜に放送なんて、もったいない!

小田さん、素晴らしい!

僕は録画していないので、もう一度見たいと思いますが、難しそうです。DVD化、してほしいなぁ。

素晴らしい番組でしたね。私ももう一度見てみたいです。
詳しい情報をありがとうございました。

本当に、よかったですね。こんな事できるんだと、思った!とても素敵なクリスマスプレゼントでした。CDになりますように!

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