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2010年11月15日 (月)

1970年3月号 シリーズ・70年代のSFマガジンを読み直す

 さて、しばらくの間僕がSFに夢中になっていた頃のSFマガジンを読み直す、というか、眺め直す(?)というシリーズを書いてみようかと思っている。きっかけは、長らく実家の押し入れの中でかび臭くなったまま眠っていた昔々のSFマガジンや奇想天外を何十年ぶりかで出して棚に並べたからである。五年ほど前に実家に戻って以来、様々な父や母の遺物と格闘してきた(まだ続いている!)一環で再び日の目を見たのだ。不憫に思い、ぱらぱらとめくるとそこには嗚呼、我が青春のSFの日々が……。
 と、思いきり感傷モードになっても困るわけだが、各号の目次を見ているだけでも、本当にSFに夢中だった頃、何もかもが新鮮で驚きに満ちてわくわくしていたことを思い出す。何しろ読書体験のその始まりにSFが位置しているので、読書=SFと言う時期が初期には続いたのだ。しかし少しずつその感激も薄れ、冷静に個々の作品を評価する様になった頃もまた興味深い。読書の範囲が少しずつ広がり、庄司薫に出会い、河合隼雄や岸田秀、日高敏隆、村上陽一郎などを読み、さらに村上春樹のデビューがあって……と僕の読書歴は続いていくのだが、今回はとにかく、玉石混交ながらきらめくような読書の魅力を僕に擦り込んでくれたSFマガジンを読み直してみる。もちろん、本当に全部読み直すことは出来ないのだが、一号ずつしげしげと眺めてみたい、という訳だ。
 お付き合い頂ければ幸いである。

Scan さてさて、では早速その第一回は、僕とSFMの出会いとなった1970年3月号から、ということにしよう。僕は6月が誕生日なのでこのとき13歳。ということは中学一年三学期ということか。確か小五か小六の時に角川の文庫でバローズの『火星のプリンセス』を見つけ、大人の本と思っていた文庫本にも僕が読める本が(ちらほらと)混じっていることに気がついて嬉しかったのだった。文庫なら安くてなんとかお小遣いで買えたからである。そして中学になり、実はSFの専門誌があったのだ、ということに気がつく。衝撃だった。何とも奇妙な表紙の雑誌が、そのSFマガジンだった。

 今ではしわしわよれよれの表紙で本文も黄色く変色しているが、もちろんピカピカだった中学一年の僕が店頭で手に取ったときにはSFMもピカピカだった。では、さっそく中身を見ていこう。

 長期連載スタート! 版権独占!
 不死販売株式会社 第一回 ロバート・シェクリイ 188
 彼のすべては死んだ瞬間から始まった! 米SF界きっての異能作家久々の登場!

 どうですか、目次の冒頭には黒字に白抜きでシェクリイの長編を連載開始することが謳われている。いまではシェクリイと言ってもピンと来ない人も多いかと思うけれど(実は当時のぼくだってピンと来なかった、もちろん)、SFマガジンの創刊当時の紙面には欠かせないビックネームだったらしい。というより、実はSFMの創刊号の巻頭の小説がシェクリイの「危険の報酬」という短編だったのだ。ある意味で、このシェクリイの短編が誕生した我が国初のSF専門誌の印象の大部分を決めた、と言っても過言ではない(かもしれない!?)のだった。そのため、SFの浸透期にはシェクリイに言及する作家・編集者が多かった。ただ、シェクリイといえば、意外性のあるスマートな短編、というイメージであったが、そのシェクリイの長編が遂に登場、という感じだったのである。

 短編としては、フレッド・セイバーへーゲン(朝倉久志)、スタージョン(荒俣宏)、キイス・ローマー(鏡明)、ロバート・ブロック(関口幸男)、ロバート・ムーア・ウィリアムズ(三田村裕)が並んでいる。因に、()内は訳者の方である。訳者と作者の関係や、この頃はみんな若かったんだろうなぁ、などと考えると面白いです。

 読切巨弾セクション1 地球を犯す宇宙の吸血種族!
 逃亡の惑星 151枚 A・E・ヴァン・ヴォクト 68

と、これまた黒字に白抜きで登場するのが、この号から始まった中篇の掲載シリーズの第一弾だったみたいです。訳者は伊藤典夫さん。実は読んでいないんだな、これが。ちょっと面白そうだけれど。

 その他、巻頭に載っていた「今月のカラーショートショート」(この部分は上質紙でイラストが新井苑子さん)が石原藤夫さんで「人類の進化」石原さんには珍しい上品な下ネタでした。中学生のぼくには今ひとつピンとこなかった記憶がある。
 中ほどにも上質紙の頁があり、そこには石森章太郎の「7P」が連載されていた。7回目で、副題に、レイ・ブラッドベリに、とある。7Pというのは要するに7頁という意味で文字通り7頁の連載もの。「ジュン」の世界に近い、と思えばいいです。

 他の連載ものとしては、SFロボット学入門「第二章 脳は魔法のコンピュータ」(石原藤夫)、SF美術館【5】オリジナルSF誌の画家たち(野田昌宏)、SFスキャナー「1969年度ヒューゴー賞詳報」(伊藤典夫)、さらにSFででくたあ(日本編が石川喬司、海外編は福島正実)、トータル・スコープ(大伴昌司)、サイエンス・ジャーナル(加藤喬)などである。

 そうそう、肝心なことを忘れていた。編集長は、M・Mこと、森優さんであった。

 また当時のSFマガジンには「人気カウンター」なるものがあった。その号に載った小説を、規定の方式(秀作5、佳作4、水準作3、それ以下に2、1)に従って葉書で投票する、というもの。抽選で5名の人にハヤカワSFシリーズの最新刊を進呈、ということである。その結果は3号後に載る。因に、この号の結果は6月号に載ったのだが、

1 不死販売株式会社 ロバート・シェクリイ 4.02
2 逃亡の惑星    ヴァン・ヴォクト   3.96
3 角笛の響き    ロバート・M・ウィリアムズ 3.26
4 天国へ還る    シオドア・スタージョン 3.22
5 ぶりきの家政婦  ロバート・ブロック  3.21
6 赤方偏移の仮面  フレッド・セイバーヘーゲン 3.00

大体4.0を越えると大台と言う感じであったかと思う。当時のSFマガジン読者には、その号の掲載作品を全部読む、という猛者が少なくなかったからこそ成り立ち得た企画かもしれない。自分の評価する作品が何点取れるか、そんなことも気になって、マガジンを手にするとまず、この頁を開く、というひともいた筈である。

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